サーキットでの死亡事故を考える
先週末の筑波選手権、私は行っていないので知人に聞いただけですので、もしかしたら誤りがあるかもしれませんが、どうも重大事故(つまりライダーが亡くなった)があったようですね。選手権終了後警察が来ていたという情報もあるので、おそらく転倒して亡くなってしまったようです。もしかしたら選手権の前日に事故があって、選手権の後に現場検証があったという流れかもしれません。
サーキットで死亡事故が起こるとニュースになる場合とならない場合があります。記憶に新しいところで言えば、ツインリンクもてぎで2019年末にあったフォーミュラカーの事故、同じくもてぎで2018年、これも年末でしたが250ccオートバイの転倒事故、2018年12月は鈴鹿サーキット130Rでも事故がありました。あと裁判沙汰になっていますが、2017年岡山国際サーキットでの事故。
筑波サーキットでも死亡事故は起きていると思うのですが、あまりニュースになってるのを見たことがありません。でも練習走行やレースで大きな転倒事故があって、後日談として「あの事故で亡くなったらしい」というのを時々聞きます。8耐優勝ライダーで筑波でいろんな走行会で先導されていた鎌田学さんも筑波のS字で転倒して入院、闘病生活のあとに亡くなりました。
筑波サーキットは今年50周年を迎え、Webサイトでも「50周年」と取り上げていますが、逆を言えば50年間その基本構造は変わっていません。各コーナーのランオフはもてぎや鈴鹿に比べて圧倒的に狭いし(広いと思っている鈴鹿でさえ、世界レベルのトップライダーからは「あのサーキットは危険」と幾度となく言われているそうです)、その中でもS字は特に危険と言われています。2ヘア立ち上がりから右、右、右と走って最初の左で、下ってるのもあって200km/h近く出るので、転倒するとインパクトがとても大きいです。先週末の選手権も雨ではなかったものの曇りで気温も低く、転倒しやすい条件が重なってしまったのかもしれません。
さて、サーキット走行ってこのように「死と隣り合わせ」とよく言われますが、死亡事故の割合って交通事故と比較してどうなんだろう??とふと思って、少し数字を比較してみました。
ここからは全くの想定話なので、合ってる確信はありませんが、出来るだけかけ離れないように考えてみます。
筑波サーキットはクラスによりますが、1枠30〜40台をmaxとしています。1ライダー1日来て1枠で帰る場合は少ないと思うので、だいたい2.5枠くらい乗るとします。走行枠は1日に15枠あって、1ヶ月は20日とします(雨やレース開催日を考慮して)。貸し切り枠もありますが、貸し切り枠の走行台数、ライダー数も通常枠と同じと考えます。すると
- 1日で30人 * 15枠 ÷ 2.5枠/日 = 180人
- 1年で180人 * 20日 * 12ヶ月 = 43,200人
となります。
1日180人というのはどうなんでしょうね。バイクで言えば、全ピット埋まって、奥の芝生あたりまでだいたい埋まってる場合で100〜120台くらいのトランポでしょうか。午前と午後の入れ替え、または2輪と4輪の入れ替えを考えると180人というのも当たらずといえども遠からずでしょうか。43,200人で1件の死亡事故と考えると割と少ないのかも(そもそももっといっぱい亡くなっているかもしれませんが)。
試しに一般道での交通死亡事故を見てみます。
政府の統計表ページを見ると、去年の人口10万人あたりの死者数は2.54人だそうです。ちなみにピークは昭和45年(1970年)の16.33人。昔はばんばん交通事故で亡くなってたみたいですね。
と考えると、筑波の43,200人で1件 = 100,000人に直すと2.3人となって、それほど大きな違いがないことが分かります。
ただし、上の43,200人というのは「のべ人数」なので、交通事故の「人口数」とは比較できませんし、また交通事故は歩行者事故も含んでいるので乗り物での事故はもっと少ないでしょう。一方で飲酒運転、居眠り等のサーキットでは普通あり得ない理由での事故もあるので、単純な比較は出来ません。が、数字上は「サーキットが一般道よりとてつもなく危険」というわけでもなさそうです。
あ、決して「だからサーキット走行は安全ですよ」というつもりは全くなくって。安全対策はしっかりやって、ルールを守っても亡くなるときは亡くなりますし(私も前のバイクに近づきすぎないようにしたり、無理に割って入ったりというのは極力避けています)。むしろ交通事故は普段の生活の中で起こる可能性があるので、普段からより一層安全意識を高める必要があるなーと。池袋の事故みたいに(その原因はここでは議論しませんが)突然母子の命が奪われる可能性もあるわけですし。
いずれにしてもケガ無く、長く楽しみたいものです。
余談ですが、Yahooニュース等でサーキットでの死亡事故があると、そのコメント欄に「サーキットが好きで亡くなったんなら本望だよな」みたいな書き込みが出てくるのですが、個人的にはまったくそんなことなくて(笑)、「死んでもいい」と思ってサーキット走行してる人なんていないと思うんですよね。「死んじゃうかも」と思っている人はもしかしたらいるかもしれませんが(むしろ「オレは死なない」と思って走ってる人もそこそこいるかもw)、長生きした方が走れる回数が増えるわけですから、サーキット走行を楽しみたい=長生きしてより多く走りたいんだと思います。