Filmoraの本当のところ(後編)

Filmoraの本当のところ(前編)では、Filmoraの購入方法、良い面について書きましたが、さていよいよ本題、イマイチな点について無邪気に書きたいと思います。繰り返しますがこの価格帯の製品にしてはかなり頑張ってると思います。

あらかじめお断りますが、プロレベルの方、お仕事で動画編集している方にはあまり参考にならないと思います。どちらかというと、iMovie等で初歩的な動画編集は経験済みで、もうちょっと凝りたいんだよねーという方向けです。

イマイチな点

「画質が悪い」の件
  • いろんなところで「Filmoraは画質悪い」って書かれているのを見ると思います。ネット上のレビューなので何を持って画質悪いかと言っているかというのはもちろんありますが、ある意味当たってるかなーと思います。ただしそれはレンダリングの画質が悪いということではなくて、他に原因があるのかなと思います。
  • まず、プロジェクト設定が日本に合ってないです。Filmoraの発売元Wondershareは中国の会社ですが、テレビの方式が中国ではPALという方式、日本ではNTSCという方式です。そもそもこれはアナログテレビ時代の話なので今はほとんど関係ないのですが、フレームレートは当時の方式の名残を今でも使っていて、日本だと30pまたは60iがデフォルトですが、中国や他のPALな国だと25pまたは50iです。で、Filmoraですが、デフォルトのフレームレートが25pになっていて、また出力時(レンダリング時)もデフォルトは25pです。これで出力すると確かに汚い。で、これをプロジェクトも出力も29.97pとか60pとかに選んでやると綺麗になります。
  • あとは、Filmoraに限らずiMovieもそうですが、入門ソフトはたいていインタレースメディアに対応していないです。一般的にビデオカメラの「標準画質」「長時間」とかいうのはだいたい60iですが、それをFilmoraにいれると30pで出力してきます(iMovieもそうですが)。つまりフレームレートが半分になったような感じになってミョーにカクカクした結果になってしまい、「うーん、画質悪い」ってなるのかなと(逆にスマホやアクションカムはプログレッシブのみでインタレースで撮れないので、こういうのは心配しなくて済みます)。
 操作感がイマイチ
  • マウスの操作感がイマイチ。他のツールだとマウスのホイールでタイムラインの「横スクロール」「縦スクロール」「縮小拡大」が出来ますが、Filmoraだと「横スクロール」が出来なくて、いちいちスクロールバーをクリックして移動とかしないといけないのがめんどくさい。
  • あとなぜか分かりませんが、テキストを変更しようと画面上のテキスト部品をクリックすると、どんなに慎重にクリックしてもほぼ毎回ずれてしまうという謎な動きをします。これは初心者向けとかいう以前になんとかなるだろと思う。
高度編集があともうちょっと
  • タイトルやエレメント(絵文字とか矢印とか)は、ものによってはとても使いやすいものがある一方で、色の変更が出来ないんです。例えばこのモーション、白しかなくて、赤とか黄色に色変更が出来ません。うーん惜しい。
  • なんとかならんものかといろいろいじくってみると、ホワイトバランス、トーン、LUT等をとにかく極端に操作してみると、なんとなく色が付くポイントが見つかって、それでなんとなくこんな色っていうのは付けられるのですが、どうしても出ない色もあって。これも高望みしすぎと言えばそれまでなんですけどね。ちなみにこの設定で赤になります。
音の編集もちょっと・・・
  • フェードインアウトやEQはありますが、ダイナミクス系のエフェクト(コンプレッサーとかリミッターとか)がないので、音の大きさ、粒を揃えるのが一苦労。いちおキーフレーム打ってオートメーションも出来るのでやろうと思えば出来ますが、まあとてもめんどくさくてやってられないと思います。出来上がったBGMを使う分にはいいと思いますが、人の声(対談とか複数YouTuberがいろいろ話すようなの)には不向きです。音声編集の柔軟さに関してはVegasが抜きん出ています。
出来上がるMP4の仕様がイマイチ?I-Frameが少ない
  • これは毎回起こるわけじゃないですが、じわっと変わる絵のときにプレーヤーによって適切に表現されない場合がありました。Windowsのデフォルトプレーヤーだと絵が止まるというか、ちょっと前のフレームの状態になるというか。本来はフェードインして明るくなりっぱなしのはずが、一瞬明るくなって、暗くなって、また明るくなります。VLCだと発生しません。
  • で、これはあくまで推測ですが、どうもFilmoraで出力されるmp4はいわゆるGOPのI-Frameが少なくて、それに起因しているのではと。
  • MediaInfoで見てみると、この中のFormat_Settings_GOPという部分がちょっと異なります。Vegasで出力された動画はM=3,N=16ですが、Filmoraの場合は、M=1,N=29です。つまりVegasの場合はIBBPBBPBBPBBPBBPIな感じで、Filmoraの場合はIPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPIとなって、要するにフルフレームの間が長いです。このせいでじわっと変わる絵のときにPだけで補完仕切れず数個前の絵(それがたまたま暗い絵)に戻ってしまうのでは? と。あくまで推測なので分かりませんが。
  • なおPremierやVegasだとキーフレームや参照フレーム(RefFrames)の調整が出来ますが、Filmoraだと出来ないので、この場合テロップを入れるタイミングを微調整することで回避しました。
そのほか
  • 複数プロジェクトを同時に開けないのもちょっと残念。前のプロジェクトのこの設定なんだったっけな?と思っても、今開いているのを閉じて、前のプロジェクトを開いて、また今のプロジェクトを開き直して、、、とかしないといけないので、効率悪いですね。
  • 出力ファイル名のデフォルトが必ず「私のビデオ」ってなるのもいただけないなあと。プロジェクトのファイル名とか前回出力したファイル名から持ってきてくれればいいのに必ず「私のビデオ」になってしまうので毎回変更です。
  • 3D LUTで色味を変えられますよという機能があって、それ自体はいいのですが、そのプリセット名に有名作品名が入ってるんですよ。ハリー・ポッターとか、ウォーキング・デッドとか。いいのかそれ?? 絶対許可取ってないだろ??
総括

とまあがしがし書いちゃいましたが、まあ初心者向けソフトにそこまで求めるのも違うかなと思います。が、惜しいところも多いんですよね~ ここが直ればかなり使い勝手良くなって、数歩飛び出た存在になるはず。先日もDVD納品の動画で部分的に使いましたが、注意点やクセさえ把握していればいいソフトですよ。これを使わないとなるとAfter EffectsでタイトルやいわゆるLower 3rd(ローワーサード、画面下部に出る氏名等のテロップ)を作っていくことになってましたが、時間もディスク容量も結構食うので、Filmoraにしてだいぶ効率は上がりました。

Filmoraには中級者向けのFilmora Proというのがありますが、まあ全く別のソフトです。いろんなレビューで「全く別のソフト」って案内されているのでまあそのとおりなのですが、それにしても同じFilmoraという名前が付いているとは思えないくらい別物。本当に全く別。使い勝手もだいぶ良くないです。出来ることも増えるといえば増えるけど、その値段(21,980円)ほどのメリットが感じられないです。だったらFilmoraで十分かなーと。