コーナーリングの難しさ　その１　フロントブレーキをどこでリリースするか

今回と次回に渡って、コーナーリングの難しさということで書いてみたいと思います。あらかじめ宣言しますが、「これを読めば難しさを克服できる☆」という内容ではないので（笑）、必要以上に期待なさらないでくださいw 「やっぱコーナーリングって難しいよね〜」とか「ここが難しいんだよな」という感想話です。

今回は「フロントブレーキをどこでリリースするか」という件。いきなり難しいトピックです。

教習所や交通安全教室などでは大原則として「コーナーリング前にブレーキを済ませておく」とか「コーナーリング中はブレーキをかけない」と習うと思います。これはもちろん当たっていて、コーナーリング中にブレーキをかけると、かけない場合に比べて転倒のリスクは上がります。それを「コーナーリング中にかけましょう」という全く反対ことを行うのがサーキットでタイムを出すための方法なので、難しいのは当然。

そもそもなんで「やっちゃいけない」ということを「積極的にやる」のかというと、

• 効率的に減速したい
• 旋回能力を上げたい

この２つにつきます。偉そうなことを書きましたが、私も十分に出来てない部分で、改善しないとなと常に思ってる２つです。

まず１つ目「効率的に減速したい」です。サーキットでタイムを上げるためにはいろんな要素が必要ですが、アクセルとブレーキという関係で言えば「アクセルを開ける直前までブレーキをかける」とか「アクセルを開けていない時は常にブレーキかける」とか言います。つまりサーキットで走るときはアクセルを開けているか、ブレーキをかけているかのどちらかしかなくて、アクセル閉じたままだらーっとエンブレだけで走るというのを極力短くしましょうというもの。

典型的なのが、筑波サーキット最終コーナー。Ｒが大きい高速コーナーのため、「スローイン、ファーストアウト」に習って進入でぐっとブレーキングしてしまうと、コーナーのボトムあたり、アクセル開けようというタイミングではすでにスピードが落ちすぎている状態で、バイクを立てるかアクセルを再度あてるかしないといけません。進入しつつブレーキを残して入っていって、アクセル開けたい！と思うポイントまでブレーキをかけられるのがベスト。

で、肝心なのが、「どこまでどういう強さでブレーキかけるの？？」という点。理想だけ言えば、転倒する直前ギリギリまでの強さで、出来るだけアクセル開ける直前までかけられればベスト。でもそんなところ探ってる最中に間違いなく転倒すると思います（笑）　最終コーナーだと200km/hオーバーから最終コーナーの最も車速が落ちるポイントで100km/hあたりなので、バンクしながらブレーキかけて100km/h落とすわけです。車速によってブレーキの効き方も変わりますし、バンク角も徐々に深くなるのでブレーキは徐々に弱めないと転倒してしまいます。

そんなの簡単に達成出来るはずもなく、、、最初はとりあえずほんとに薄くでいいので、アクセル開ける直前までブレーキをかけるクセを付けるといいのかなと思います。そこから徐々にかけ始めをちょっと強めとかいう調整をしていく流れ。

２つ目の「旋回能力を上げたい」というのも難しい話です。ここもさらに２つに割ることが出来て、

• フロントタイヤのグリップ向上
• フロントフォークを縮めて旋回力アップ

となります。

タイヤのグリップ向上はそのとおりだと思って、しっかり加重がかかったほうがタイヤが地面に押さえつけられる力が増え、結果グリップが上がるという流れ。物理的に書くと、ちょっとややこしいですが

• 動摩擦力F[N]＝動摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)

になります。ブレーキをかけるということは垂直抗力が高まり、タイヤもより潰れるので接地面積が増えて摩擦係数も上がって、結果摩擦力が上がります。

もう一つ、「フロントフォークを縮めて旋回力アップ」ですが、これもバイクの構造的な話で、フロントフォークを縮めた結果フォークの角度（いわゆるキャスター角）が立ってくるので、より旋回力が増すという流れ。

実際のバイクでキャスター角を見てみると、

という感じになり、レーシーなバイクのほうが立ってるのが分かると思います（スーパーカブも意外と立ってますね。これはレーシーというんではなくて小回りしやすいようにだと思いますが）。ただでさえ立っているフォークを縮めることでさらに立たせようというアプローチ。下図のようにブレーキをかけてフロントが下がると、結果フロントフォークが立ちます。

というわけで、ここまでの説明を振り返ると、教習所ではＮＧと言われた「コーナーリング中にフロントブレーキ」って良いことずくめに見えますが、、、それと引き換えに「転倒」リスクがぐんぐん高まります。車速も上がってるはずなので、限界を超えたときのコントロールが難しいです。びびっちゃうんですよねぇ。じゃあバイクの限界を高めようとハイグリップタイヤを履くと、破綻したときのコントロールがさらに上がってもう転倒するしかなくなってしまいます。

最初はとにかく「少しずつ」を心がけて、徐々に進めていくしかないかなと思います。反復練習あるのみ！　（と自分に言い聞かせ）

次回はフロントブレーキに続き、「リアブレーキってどこまで使うのか」です。