動画編集パソコンに効くのはCPU? GPU?
ここ数年はAMD Ryzenが出てきて一気にマルチコアが賑わってきましたね。私も次買うならRyzenで作ろうかと思っていますが(後日追記:Ryzenにしました!レポートはこちら)、これ、もう20年くらい前からの議論で「動画編集パソコンに必要なスペックって?」って話。
「動画編集 CPU」とかでググると様々なページが表示されると思いますので、だいたいの傾向はつかめると思うのですが、おそらく世の中の大半の人(特にパソコンベンチマークの一環で動画編集のことを書いているレビュー)は、動画編集の中の「エンコード」部分に特化しているのがほとんど。確かにエンコードスピードは重要ですが、編集をがしがしやっている方からするとエンコードって割と放っておける作業なので、他に作業をしつつ気長に待つということも出来ます(締め切り迫ってるときとかは速く終わってくれ~と思いますが)。
むしろ編集作業、プレビューが快適になって欲しい!
相当昔に作ったAfter Effectsのコンポジション再生がいまだにリアルタイムで再生出来なかったりするので、やっぱ編集時とエンコード時の速さというのは違った要素が絡んでいます。
CPU? GPU? どっちが重要?
これは主観も入るのであくまで参考程度にしてもらえればと思いますが、私の経験上、総じて言えばCPU、クロック数とコア数が効いてきます。敢えて書くとすれば
- エンコード(レンダリング)スピードを上げたいのならGPU + GPU対応編集ソフト
- エンコードより編集やプレビューの快適さ重視ならCPUクロック数コア数を上げる
これかなと思っています。またこれも参考までに、過去のパソコンスペックと動画編集の快適さを出してみました。何かの参考になればと思います。
(追記)最近やたらとGPUが高くなってるし、そんなに「総じてCPUが効く」って言うんなら昔のGPUを中古で買って、浮いたお金でCPUに投資したほうがいいんじゃないの?と考えるよなと思って、昔のGPU(GTX970)とのベンチを取りました。結果、GTX1060とGTX970はほとんど一緒でした(一部GTX970のほうが速かったのもあり)。(追記終わり)
こうやって改めて書き出してみると、ビデオカードってなにかの技術革新がないと劇的に改善するものではないと思っていて、例えばQuadroのCUDA、GTX1060のNVENCがそれにあたりますが、いったんNVENCが有効のカードを買った後は上位のカードに買い直してもそれほど大きく改善しないというのが実感です。いま私はGTX1060を利用中ですが、おそらくRTX2080等に変えてもそれほど大きく変わらないという予想(またはかけた値段ほどの見返りがない)。
動画編集ソフトでもよく「最新のビデオカードに対応!」とありますが、Vegasのように一部コーデックとか一部エフェクトとか限定になる場合も多く、対応コーデック利用時はめちゃくちゃ速いですが、すべてのコーデックにおいて速くなるわけではありません。
こちらはVegasのレンダリング時の画面ですが、同じスペックの出力にNVENCとあるものとないものがあります。NVENCありでレンダリングすると、素材にもよりますが、ありのときに31秒、なしのときに184秒と雲泥の差。ただしこれはMAGIX AVC/AAC MP4コーデックでしか使えず、他のコーデックは相変わらずCPUに強烈に依存します。
NVENCがありなしのときのCPU, GPU利用率がこちら。なしのときはCPU 100%, GPU 2%程度ですが、NVENCありだとCPU 70-80%, GPU 20%前後。こんな少ないGPU利用率でも先のように6倍くらい高速なんです。逆に言えばNVENCありでもCPU依存率は引き続き70%-80%と高くて、このへんからもやっぱCPUのスペックを上げた方がより効果的かなと思います。
GPUの恩恵は目を見張るものがありますが、時々変なエンコード結果になる(映像が乱れたり、絵と音がズレたり)時もあって。素材によるのか、パラメータによるのか分かりませんが、なのでここぞというときにはCPUベースのほうが安心できます。
CPUはコア数増加、クロック数増加に割と純粋に付いてきてくれているし、原則どの処理も速くなります。どのCPUか迷いどころかと思いますが、個人的にはシングルコアのベンチ結果がなるべく高いものを選びます。同じクロック数でもベンチ結果が結構変わるようですね。なのでクロック数ではなくシングルコアのベンチ結果で見ています。
今年はAMDを買ってみようと思っているので、また買ったらベンチマーク、体感の結果をアップしたいと思います(後日追記:AMDに変更しました!レビューはこちら)。ほんとはCPUがとかGPUがとか、そんなちまちましたこと言わないでぽーんと最上級クラスを買えればいいですが、そんなお金はないので、、、いろいろ経験した結果というお話でした。
GT1030はNVENC非対応
最近のNVIDIAのビデオカードはどれもNVENCに対応しているのかと思っていたら、そうではないようです。安価でとりあえずそこそこ動くGT1030ですが、これはNVENC使えません。知らずに買うと結構泣きますので要注意。どのカードが対応してるか詳しくはNVIDIAのページに載ってますのでご確認ください。基本的には最近のGTX, RTX, QUADROなら対応してます。価格帯で言えば2万円くらいからのカードです。
メモリってどのくらい必要?
これも主観でしかないですが、16GBあればとりあえず問題ないと思います。全部Adobeで、Premier, Photoshop, Illustrator, After Effectsをガシガシ使いたいという場合は32GBくらい必要でしょうが、ツール1つで動画編集をやる分には16GBで十分でしょう。メモリの量によって処理速度が変わるというのはまずないです(ただしメモリの規格によって2666とか3200とかでは変わるでしょう)。
マルチカム時はHDDの読み出し速度に注意
最近よく見るマルチカムですが、例えばAVCHD 28Mbpsを4カメで取ると112Mbpsとなりますが、実際にはもっと必要で120-130Mbpsくらいになるでしょうか。で、さらにそれらを1つのHDDに入れておくとHDDの読み出し速度の限界に引っかかって詰まってしまいます。HDDってシーケンシャルリードだと100MB/s(=800Mbps)くらい出てまだ余裕あるように見えますが、4カメのランダムリードだとがくっと落ちるので、頭打ちする可能性が出てきます。
SSDにするという方法もあると思います。そうすれば一気に解決すると思いますが、一方でカメラの性能も上がって1カメ100Mbpsとかで撮れるものもあるので、それ4カメとかにすると400Mbpsとかなってまた詰まってしまうかも。最終のレンダリング時はあまり気にならないですが(もちろんHDDよりSSDのほうがいいですが、待てばなんとかなるという意味で)、編集時にはがっちり効いてきますので、マルチカムのときにはこういうところに注意してください。
これまでの動画編集PC構成
年 | CPU | GPU | 所感 |
2001 | Sony VAIO モバイルPentium II 366MHz |
オンボード | DV編集を行ってましたが、リアルタイムプレイバックもレンダリングもどちらも厳しかった。でも当時としてはビデオ編集が自宅で出来るということだけで満足というレベル。使用ソフトはVegasの前身のVideo Factoryというもの。 |
2003 | Pentium 4 3.06GHz | Matroxのなにか | ほとんど記憶にないですが、このへんから盛り上がってきたストリーミング(Windows MediaとかReal Audioとか)が快適に見られた記憶はあります。動画編集はどうだったかなあ。 |
2007 | 同上 | ELSA 776 GT | DVは問題なかったが、この年買ったHDVカメラの再生時フレーム落ちがひどい(秒間2フレくらい)。それでも我慢して編集してレンダリングすることは可能。使用ソフトはVegas Movie Studio。HDDの遅さも影響してたかも。 |
2008 | E8200 + P5K-E | ELSA 785 GT | システム刷新、グラボ+速いHDD(7200rpm)に変えてHDVの再生時のフレーム落ちはかなり解消された! |
2011 | 同上 | Quadro 600 | After Effectsをさわり始めたら、785GTだと重くて全く使い物にならず、Quadroの一番安いものに変えたらプレイバックが劇的に改善! (と言っても秒間10フレいかない程度だけど、でもそれでもかなり改善) レンダリングも40%近く高速化。
ただしVegasのレンダリングは微増程度 |
2011 | i5 2500k + P8H67-V | Quadro 600 | AEのレンダリングはさらに30%くらい改善したけど、再生は微増
Vegasのレンダリングは300%くらい速くなった! |
2013 | 同上 | ELSA GTX 570 | AEのレンダリングは変化なし、 Vegasのレンダリングは20%アップ、再生も劇的に改善(Quadroで秒間15フレくらいだったのが30フレで再生されるようになった!) |
2016 | 同上 | Radeon R9 380 | AEは全く効果なし
VegasでFHD 60p MXF(4:2:2)の再生が全く追いつかず(秒間10フレいかない程度)、ビデオカードを交換したところ、秒間20フレくらいになったが、まだまだリアルタイム(秒間60フレ)にはほど遠く。レンダリングスピードもほぼ変化なし。これまでで最も無駄な投資。 |
2017 | i7 3770k + P8H67-V | 同上 | VegasでFHD 60p MXF(4:2:2)の再生が追いつかなかった件が解消☆ やっぱCPUだなーと改めて認識。
AEの再生も15~20フレくらい出るようになった(使用法によりもっと出るとき、出ないときあり) |
2018 | 同上 | ASUS GTX 1060 | ディープラーニングをしたくてAMDのビデオカードでは対応していないため、改めてNVIDIAに戻ってきた。レンダリングスピードはほぼ変わらずだが、VegasのNVENC対応コーデック(MAGIX AVC/AAC MP4)でエンコードすると3倍くらい速くなった! ただしそれ以外のコーデックでは効果がないので全く変わらず。
AE側にもほぼ効果なし |