ノートi7ってデスクトップi7と同等に動画編集出来るのか?
これ、割と結構気になっている件。私はCPUの型番にそこまで詳しいわけではないですが、ノートってバッテリーを持たせるために、低電圧とか、通常時のクロック数が低いとかいろいろあって、たとえノートでi7って言ってもデスクトップのi7といろいろ違うんじゃないか(要するにデスクトップのi7のほうが速いんじゃないの?)と思ってしまいます。
私もかれこれ20年くらいパソコンを使っているんですが、20年くらい前のノートPCってまあ遅くて遅くて。デスクトップと同じクロック数の割にとても遅い。遅い理由はだいたいHDDだったりするのでそこはSSDになってだいぶ解決しているとは思うんですが、当時のイメージがあって未だに「ノートPCは遅い!」という固定概念が根強く残っています。
先日、うちの家族用にDynabookを買ったのですが、せっかくならと思ってi7モデルを購入したので、私が以前使っていたi7-3770Kとどの程度処理速度が違うのかを比較したいと思います。
余談ですが、この購入前に使っていたノートPCは、「家庭用だからCeleronでいいか」と割り切って10年くらい前に買ったんですが、なんとかなったといえばそうですが、しょっちゅうイライラしてました。HDDモデルだったので途中でSSDに交換したんですが、それでももう耐えられないくらいイライラ。意外と重要だったのがファンの音。Celeronだから無駄にファンが回ってうっとうしくて(回るんなら回りっぱなしでいてくれたほうがむしろいいんですが、止まったり回ったりするから余計にイライラ)、次に買うなら最低でもi3だなと決意した経緯があって。で、i3モデルで候補を絞っていったところ、i7モデルが価格的にまあ出せるかなという程度の価格差だったのでi7モデルにしました。Dynabook.comにて型落ちのi7モデル(AZ65/K)を購入、これとi7-3770Kとの比較になります。
一点お断りですが、i7-3770KのほうはGTX 1060での結果となります。本来はグラフィックカードなしで比較出来るのがいいのですが、i7-3770KからAMD Ryzen 5 2600に変えてi7を処分してしまったのでもう出来ず。できる限りGPUの影響を排除したレビューにしたいと思います。
マシン構成
Dynabook AZ65/K | 自作 | |
CPU | i7-8565U | i7-3770K |
メモリ | 8GB | 8GB |
HDD | SSD M.2 | SSD SATA |
ビデオカード | なし | ASUS GTX 1060 |
OS | Windows 10 Home | Windows 10 Pro |
i7-8565Uとi7-3770Kのスペックはこんなかんじ
i7-8565U | i7-3770K | |
アーキテクチャ | Whiskey Lake | Ivy Bridge |
リリース年月 | 2018年夏 | 2012年春 |
基本クロック | 1.8 GHz | 3.5 GHz |
ターボ時 | 4.6 GHz | 3.9 GHz |
TDP | 15 w | 77 w |
6年後にリリースされたi7を比べるのがそもそも比較にならないかもしれませんが、あくまでご参考ということで。i7-8565Uは基本クロックが低い代わりにターボブースト時は4.6GHzとかっ飛ばし。すげー。でもこの特性が良と出るか否と出るか。
しかしモバイル用i7ってTDPが15wなんですね。めちゃくちゃ低い。どうりで最近のノートはバッテリーの持ちがいいんですね。さてそんな省電力のi7がデスクトップのi7に太刀打ちできるのか??
まずは一般的なベンチマーク結果をいくつか。このへんの情報はネットでいろいろ引っかかると思うので、さらに詳細が必要でしたらググってみてください。
基本的なベンチマーク結果
i7-8565U | i7-3770K + GTX 1060 | |
FF14ベンチ 紅蓮のリベレーター 最高品質/仮想フルスクリーンモード |
832 (1920×1080) |
10636 (1920×1200) |
CINEBENCH R15 (CPU) | 550 | 661 |
CrystalDiskMark SEQ1M Q8T1 (MB/s) | 1375(R)/832(W) | 553(R)/537(W) |
SUPER PI 100万桁 | 7秒 | 11秒 |
FF14はグラフィックカードの影響をもろにうけてしまってますね。一方、CINEBENCHは思ったほど大きく劣らないです。
一番最後のSUPER PIっていまさらいる??って思うかもしれませんが、個人的にSingle CPUの速さを見るのに使ってます。なんとi7-8565Uのほうが速い!(それも結構速い) これは動画編集も期待できます。そしてSSDがめちゃくちゃ速い(シーケンシャルリードで1300MB/s)。私のようにNASに素材を置いてNASに書き出す場合にはほぼ恩恵にあずかれないと思いますが、4K動画マルチカムでReadのトータルが200Mbps(=25MB/s)とかいうときに威力を発揮しますね。めちゃくちゃ速いなー。20年前のノートは確か10MB/sくらいでした(HDBENCHというソフトでの計測結果)。
さて本命の動画編集時のベンチマークにて。個人的にはレンダリング速度よりもプレビュー速度を重視してるので、そちらの結果から(レンダリングは最悪待って他のことすればいいのでなんとかなる。プレビューは編集操作の快適さにもろに聞いてくるので譲れないポイント)。
使用ソフトはVegas Pro 17です。素材はNAS上、ネットワークはどちらも有線1Gbpsです。ノートPCはバッテリーではなく電源に接続しました。
動画編集ベンチマーク結果
プレビュー結果 | i7-8565U | i7-3770K + GTX 1060 |
4K 30p | ほぼ30fps | 25-30 fps |
FHD 60p AVCHD | ほぼ60fps | 60 fps |
XAVC 422 60p MXF | 2-4fps | 25-30 fps |
FHD 4カメ (FHD 60p x3, FHD 60i) | 1-2fps | 2 fps前後 |
続いてレンダリング結果です。変換先コーデックはSony AVC/MVC(MP4)で、ローカルSSDへの出力です。
レンダリング結果 | i7-8565U | i7-3770K + GTX 1060 |
4K 30p を FHD 30p | 1:37 | 1:25 |
XAVC S 60p を FHD 60p | 3:22 | 3:51 |
XAVC 422 60p MXF を FHD 60p | 17:41 | 14:22 |
XAVC S 60p + XAVC 422 60p を FHD 60p | 9:38 | 6:28 |
ノートi7もなかなか行けるじゃん!
ノートi7だと6年前のデスクトップi7に及ばずも、思ったほどの差は付かなかったです。中にはi7-3770Kをしのぐ結果もあって驚き!(XAVCS 60p->FHD 60pへのレンダリングはむしろi7-8565Uのほうが速かった!)。なので用途が絞れるなら十分候補に挙がると思います。例えば
- 基本1カメで撮った素材の編集でマルチカム無し。たまに2本でマルチカムしたりする程度。
- フォーマットは一般的なAVCHD(AVC, 4:2:0, 8bit, 最高28Mbps)を使って、4:2:2とか100Mbpsのものは使わない
- エフェクトもそれほどがしがし使わない
というのであれば、十分動画編集に使えると思います。これらが当てはまるユーザーって動画編集をやり始めの方とか、少しステップアップしたいという方になるかと思います。
参考までにプレビュー時のCPU利用率キャプチャがこちら。4Kプレビュー時は35%, 4カムプレビュー時は86%となっていますが、どちらもCPU速度は2.8-2.9GHzあたり。ターボ時の4.6GHzまで上がりません。
一方、SUPER PI実行時のがこちら。4.4GHzくらいまで上がってます。ターボ時のクロック数まで上がるのはシングルCPU利用時となっているようで、最近の動画編集ソフトはマルチCPU利用前提となっていますが、マルチだと4.6GHzまでは上がらず、3GHzあたりがMaxなのでしょう。一方i7-3770Kは基本クロックが3.5GHzとすでに3GHz越えですのでこのへんのスペックの違いがデスクトップi7が有利な結果に結びついているようです。
ターボブーストを常に効かせようと電源オプション – プロセッサの電源管理 – 最小のプロセッサの状態を100%にしてみたところ、何もしない状態でCPU速度は3GHz越えなのですが、レンダリングでマルチコアを利用し始めると結局2.8GHzくらいまで落ちていき、ベンチ結果には全く変わらず。
別のアプローチとして、ノートでもグラフィックカード付きのものもあるので、それらにすると同じi7-8565Uでももうちょっと良好な結果になると思います。
どうもこのDynabook AZ65/Kの構成だと、AVCHDが1本とかいう動画編集はわりといけて(プレビューもエンコードもi7-3770Kにだいぶ近い結果)、ややこしい系(MXFとか422とかマルチカムとか)が苦手の模様。特にプレビューがひどい。でもAVCHDが1本だったら十分いける構成です。
余談ですが、ノートはディスプレイの質がイマイチかなーと思いますね。今回のベンチマークでも色の乗り方が薄かったり、偏っていたりするのが厳しいかも。ここはやっぱ外部ディスプレイをつないで本来の色で編集できる環境を用意したほうがいいかもと思いました。
あと音だなー。動画って映像もそうですが音のクオリティが全体のクオリティアップにつながるのですが、このモデルは「オンキヨーと共同開発したステレオスピーカーを搭載」だそうなのですが、映像を仕上げるというクオリティにはだいぶ遠いので、これも外付けのスピーカーまたはヘッドフォン(出来れば両方)あるといいと思います。