グラボ高騰時代の動画編集パソコン構成
なんでまたこんなに高騰してて、そして値下がりしないんだろうというくらいグラフィックボードの高騰が続いています。2020年暮れから始まった「グラボ争奪」の流れ、それに伴ってぐんぐん価格が上がっていき、2021年6月になっても高止まり状態。NVIDIAからは新しくRTX 3070 Ti等が出ましたが、初値で10万円越えと、「いくらが適正」だったかよく分からない値踏みになってます。
これはビットコインの相場と連動してて、2020年前半は「マイニングするより電力消費のほうがコスト高」でしたが、これだけ上がると「マイニングのほうがトク☆」となって、特にマイニングで高性能を発揮するビデオカードがどんどん値上げされていきました。
最近は少し落ち着きつつありますが、それほど価格も下がってないし、また再び上がるかもしれず、NVIDIAもたまらず「ビデオカードでマイニング出来ないように制限を施す」と、GPGPUの存在意義と逆行するような訳の分からない制約をかける始末。
マイニング需要に伴って高性能のカードが値上がりするのはまだ分かるのですが、マイニングにはちょっとキツいんじゃないの??というミドルレンジのカードまで値上がりしてしまい、RTX2060クラスや、さらにその下のGTX1660クラスまで2倍前後まで値上がりしてる状態。ハイエンドクラスを買おうと思った層もミドルレンジに流れてきてるということでしょう。でもミドルレンジグラボに7万円とか出します???
以前、「動画編集パソコンに効くのはCPU? GPU?」という中で「GPUはミドルレンジくらいでよくて、それよりもCPUを!」と書きましたが、かといってGPUナシでは動画編集パソコンは作れず、じゃあ1万円くらいで入手出来るGT1030にしてしまうとNVEncが使えなくて、いったいどうすればいいの??
だったら、ちょっと古いけどGTX9xx時代のカードとの組み合わせでなにか構成してみたらどんなもん?? というわけでちょっと古いパーツ同士の比較になってしまいますが、GTX1060とGTX970ってどれくらい違うの??という比較結果を書きたいと思います。
この時期ではGTX9xx時代のビデオカードですら少し値上がり傾向にあるようで、GTX970は以前ならヤフオクで1万円切るくらいだったと思うのですが、最近では12,000~15,000円くらいする模様。それでもGTX1660の6~7万円に比べたら遙かに安く、その分CPUに振った方がいいですよ!と言いたい。
GPUと相対するように、旧世代前のCPUが最近安くなってます。時々Ryzen 9 3900Xが投げ売りされるときがあって(なぜか3700Xより安い!)、これをもとに例えばちょっと高めに見積もったとしても
Ryzen 9 3900X (45,000) + MB (10,000) + メモリ16G(10,000) + GTX970中古(15,000) = 80,000円とかで構成すれば、遙かに費用対効果バツグンの動画編集パソコンが組み立てられます。80,000円って下手すりゃグラボ1枚分の値段ですよね、今なら?
Intelの旧世代モデルもだいぶ安くなってきましたよね。Core i7 10700Fはぼちぼち2万円台突入か?という値崩れ感。最新のCore i7 11700でも3万円台となってます。今はCPUの買い換え時期かもしれません。
「GTX970っていまさら使い物になるの??」っていうのが気になるところですが、私がいつも使ってるGTX1060との比較を下記にまとめました。結論から言うと普通に使う分にはなんら謙遜無いレベルの使用感です! むしろPremiereやFilmoraだとGTX970のほうが少し速い! 今はビデオカード高止まり時代なので当面これで乗り切って、安くなったタイミングでビデオカードだけ買い換えるというのがいいでしょう。
繰り返しますが「動画編集パソコンにはCPUスペックが最も利いてくる」ので、もしかしたらGTX970クラスで相当延命可能な構成だと思います!! GPUに10万円もかけるんだったら、そのぶん12コアとか16コアのCPU(しかも1世代前)を購入を検討してみてはいかがでしょうか。もちろん「今でもGPUに10万円出せるから!」という方は今グラボ買っちゃいましょう!
基本スペック
CPU | Ryzen 5 2600 | 同じ |
マザーボード | ASUS TUF B450-PLUS GAMING | 同じ |
メモリ | CORSAIR CMK16GX4M2B3200C16 ( 8GB x 2 ) |
同じ |
ビデオカード | ASUS PH-GTX1060-6G | ASUS STRIX-GTX970-DC2OC-4GD5 |
ディスク | SANDISK SSD SDSSDH3 ( 500GB ) SEAGATE HDD ST2000DM001 ( 2TB ) |
同じ |
電源 | 鎌力参450W | 同じ |
エンコード結果(速いほうに青印)
GTX1060 | GTX970 | ||
Vegas | 4K30p XAVC S 50Mbps
to 4K30p 20Mbps |
1:18(NVENC) | 1:21(NVENC) |
Vegas | 4K30p XAVC S 50Mbps
to 1080p60 8Mbps (*) |
2:16(CPU) | 2:27(CPU) |
Vegas | XAVC 422 1080p60 50Mbps
to 1080p60 8Mbps |
6:11(NVENC)
14:41(CPU) |
7:20(NVENC)
14:49(CPU) |
Vegas | XAVC S 1080p60 50Mbps
to MP4 1080p60 8Mbps |
0:53(NVENC)
4:14(CPU) |
1:01(NVENC)
4:02(CPU) |
Filmora | XAVC S 1080p60 50Mbps
to MP4 1080p60 8Mbps |
1:03 | 1:00 |
Premiere CS6 | XAVC S 1080p60 50Mbps
to AVCHD 1080p60 8Mbps |
1:08 | 1:04 |
(*)ほんとは4K30pのCPUエンコードを試したつもりでしたが、FHD60pのCPUエンコードをしてたことに後で気づきました
予想では「GTX1060のほうがちょっと速いかな?」というものでしたが、Vegasではほぼそのとおりだったんですが、FilmoraやPremiereではむしろGTX970のほうが速いという結果に! やっぱ1世代前といってもランクは上ですからなんでしょうか。私はVegasをメインに使ってますが、Filmoraメインの方だったらむしろGTX970のほうがいいのかも(とはいってもわずかに速い程度なので体感出来るレベルではないと思います)。
GPU使用率のキャプチャも取ったのでご参考までに。
まずVegas, GTX1060のとき。
次にVegas, GTX970のとき。CPU利用率が増えて、Video Encodeは減ってます。Video Encodeで稼げない分をCPUで補ってるということでしょうか。
Filmora, GTX1060はこちら。Video Encodeは使われなく、3Dが上がってます。
続いてFilmora, GTX970のとき。Vegasのときと同じくCPU利用率は上がり、GPUは下がってます。ただいずれの場合もGPU利用率は30%未満なので、コア数の多い、またクロック数の高いCPUにすることでさらにGPU性能を引き上げることが出来るでしょう。そういう意味でも今はGPUではなくてCPUにコストかけるべきかなーと。
Vegasでのプレビュー結果
GTX1060 | GTX970 | |
FHD60p | Best Fullで60fps | 同じレベル |
4K30p | Best Fullで30fps | 同じレベル |
XAVC 422 60p | Best Fullで60fps | 同じレベル |
4カメラ (XAVC 422 60p XAVC S 60p AVCHD 60p AVCHD 60p) |
シーンにより40-50fps | シーンにより30-40fps |
ここはほとんど一緒でしたね。厳密には4カメラ時のパフォーマンスはGTX1060のほうが良かったですが、GTX970でも30fpsくらいは出るので編集操作上はなんの不都合もないですね。これが10fps以下だとさすがにキツいですが。
ただ一点、プレビューではなくてWindows純正プレーヤーとかVLCでの再生に関して、4K HEVCの再生は圧倒的にGTX1060に部があります。これはGTX970がHEVCのハードウェアデコードに対応していないためで、4K HEVCを再生するとカクカクというレベルではなくて、静止画状態となります。見てられないですね、これだと。なぜか下位のGTX960からはHEVCハードウェアデコードに対応している模様。ただHEVCは徐々に浸透してきたとはいえ、まだ触れる機会が少ないコーデックなのでそれほど気にしなくてもとは思います。またHEVCでもFHDだと問題なく再生できます。4K HEVC再生をしたい方はGM206と呼ばれる世代以降のグラボを選んでください。詳しくはNVIDIAのNVDECODEページを参照していただきたいですが、下記に一部抜粋しました。
緑で色づけされてるところが「対応している」という意味合いで、こうやって見ると「HEVC見るなら最低でもGTX960」と見えてしまうかもしれませんが、そもそも4K HEVCの素材ってそんなないですし、ましてやTuring以降の「4K HEVC 4:4:4」という素材を一般的に扱うことはないので、個人的にはKepler以降であればとりあえずいいとは思います。どうしても「GTX970で4K HEVC見たい!」という場合は、Filmoraなどの動画編集ソフトのプレビュー画面で見るという手があります。これだとGPUにそんなに依存しない再生方法になり、GTX970でもコマ落ちせず見られます。Filmoraだとプレビュー画面を全画面表示も出来ます☆
「4:4:4って何??」って方は、「クロマ・サブサンプリング」を見てください。普段接している動画はたいてい4:2:0です。
(おまけ)CuPy利用の機械学習(Chainer利用)
全くの専門外ですが、興味レベルの機械学習でも簡単にベンチ。2つのシナリオを試しましたがどちらにおいてもGTX1060のほうが10%程度速かったです。ただCPUオンリーに比べたら圧倒的に速いですし、さらに速度を上げたい場合はWindowsではなくてubuntuで実行したほうがさらに数倍速くなるので、GTX970クラスでも十分だと思います。もちろん本格的にやろうと思う方は新しいGPUのほうがいいので、あくまで「いったんは」というレベルとお考えください。
GTX1060 | GTX970 | |
画風を変換するアルゴリズム
モデル vgg / 4000イテレーション |
9:30 | 10:36 |
RNNによる自然言語処理 | 774秒 | 800秒 |
ちなみにこのときのGPU利用率は10%未満なんです。でもGPU温度は76℃とか行っていて「超がんばってる」状況ではあるようですが、CPU利用率なんてさらに低い3%とか4%です。これでいてCPUオンリーの時より数百倍速いんです。機械学習ではとにかく大量のデータを取り扱うので、データコピーに時間がかかる?(全くの素人なので見当違いの可能性あり) 高価なGPUを投入するのもいいんでしょうが、CuPyなのかプログラムそのものなのかでもっとCPU/GPUの稼働を高めるチューニングをするといいのかなと思います(そもそもそんなこと出来るのかも分かってませんが)。
GTX1060のとき
GTX970のとき
私もちょっと前までは「もうちょっとしたらRTX2060でも買ってみるかなあ」と考えてましたが、もう遙か手の届かない域に行ってしまい、、、逆にRyzen 9 3900とか3900Xとかが急激に安くなってるので、CPUを先にアップグレードしようかなーと模索中。3900だとTDP 65Wなので熱もいまの2600Xと同程度かなーとか考えてます。
あといちおお断りいたしますが、「GPUに金なんてかけるもんじゃねぇ~」というネガティブキャンペーンをしているわけではありませんので(笑) だってGPU新品が高すぎて、、、手が出ないからCPUに目を向けようか!ってノリですね。