お仕事用デモ動画制作に向いてる動画編集ツール
私はいわゆるIT業界に勤めてて、仕事で時々「デモ動画」を作ることがあります。普段はお客様先に出向いて製品デモをする訳ですが、いろんな理由で「デモ動画ください」と言われます。打合せに出られなかった方にもデモの様子を共有したいとか、あとでデモを振り返りたいとか、上申用書類を作るときにキャプチャ差し込みたい、とか。また自社社内共有用としても便利なので、用意しておくとなにかと使い回しききます。
でも作ったことある方なら分かると思いますが、お仕事用なので基本地味な動画な割に、意外と作るの面倒。まー動画編集ってそもそも面倒なんですが、こういったお仕事用デモ動画って割とやること決まってて、でもそんな用途に特化した動画制作ツールが意外と無いんです。
パワポのような使い勝手で動画制作できるとうれしいんだけど・・・
そこで、iMovieとかその他の動画編集ツールで、お仕事用動画制作に向いているとか向いていないとか、そんなことを書いてみたいと思います。
お仕事用デモ動画といってもいろいろあるので、ここでは製品デモを一般の社員が作ってお客様に共有するという動画を前提とします。なお企業や製品プロモーション用動画は求めるクオリティが違うので、プロにお願いすべき。
iMovieで作ってみる
典型的な企業説明動画ってこんなのを想定してます、というのもかねてiMovieで作ってみたのがこちら。キャプチャ済み動画が手元にあるという状態から作って、30分くらい?(無音です)
見ての通り、派手な演出は無く(笑)淡々と過ぎていく動画です。iMovieはホビー向けの要素が強いので、こういう地味な動画を作るのにはちょっと工夫が必要です。例えばテキスト。iMovieだと「タイトル」というメニューになっていますが、その名の通りタイトル向けの派手なテキストばっかで、こういう字幕向けテキストがないんです。しょうがないので一番地味な「下」というのを使うと良い感じに出来ます。「下」は右寄せになっていますが左寄せにも出来ます。位置の調整が出来ないので、改行を入れたりしてそれっぽく調整します。
ただいくつか気になる点もあります。例えば
- テキストが見にくいです。今回のように背景が白黒で、テキストも大抵白か黒なので、混ざって見にくいです。これを回避するためによくやるのが、テキストにグレーの背景をつけたりするのですが、iMovieにはその機能はありません。
- 背景の付いた「タイトル」もあるのですが、位置が最下部固定、かつ透過もしないので、デモ動画の一部が見えなくなってしまいます。
- 社外秘情報を隠す機能がありません。企業特有の「出しちゃまずい情報」を隠す機能がiMovieにはありません。消したい箇所が画面の端っこだったらクロップすればいいのですが、画面の真ん中を一部消したい場合はどうにもできず、しょうがないので別途真ん中が覆われたPNG画像を用意して、動画の上に重ね合わせるとかしないと出来ません。んーめんどくさい。制作手順も増えるし。他の社員でも作れるくらいの簡単操作じゃないと、動画制作依頼が全部自分に来てしまいます(笑)
- ハイライト表示が出来ません。「ここを見て!」というやつですね。いろんなハイライト形式がありますが、例えば一定時間とあるところをズームするのはiMovieでも可能ですが、周りを暗くして見て欲しいとこだけ明るく残すというのは不可。
- 画面の比率(アスペクト比)が固定で16:9とか4:3とかしか選べません。ブラウザやエクセルなどの操作デモ制作の場合、開いているウインドウが綺麗に16:9の比率になっていない場合のほうが多いと思いますが、iMovieだと16:9とか4:3など一般的なものからしか選べず、一部切り詰めるか、無駄な背景が入ったままにするしかないです(上のサンプルでは右側に無駄な他のアプリが映り込んでいます。あれを入らないように横を縮めると、縦が切り詰められ見切れてしまいます)。
などなど、企業向け動画として万能に使えるというものでもなさそうです。
有料ツールの中にも得手不得手があって・・・
「うんうん、そんなのPremierとかVegas使えば出来るっしょ??」
そうです、そのとおりです。PremiereやVegasでベジェでマスクして抜いて、透過率も設定して、必要だったらモザイクかけて・・・ハイ全部出来ます。ただ、繰り返しになりますが、他の社員でも使えるようなレベルでないと、作業が全部自分に寄ってきてしまいます。
最近使ってるFilmoraは、簡単操作で割といいところまで行くんですが、やっぱダメ。例えばハイライト機能。ハイライトしたいところだけ抜くことは出来るのですが、それ以外のところを薄く透過させることが出来ず真っ黒になってしまうんです。希望としては下のようにそれ以外のところもうっすら見えてて欲しいんですが、それが出来ない。操作も直感的じゃないし。
Movavi?
なんかいいツールないかなーと思って調べていたら、Movaviというツールを発見。聞いたこと無いな、このツール。でもいろいろ試用してみたら、企業向け動画にはまりやすい機能がいろいろありました。
例えば強調表示やマスク。これだとパワポのように四角を描画するだけで強調表示が出来て、しかも強調表示しないところの透過率も調整出来る☆ そうそう、これです探してたの!
字幕テキストも簡単に生成できます(背景付き可、不透明度=透過率も設定可)。
ステッカーと呼ばれる賑やかしアイコン(→とか□とか)も用意されてて、「ココ見て!」っていうのをより効果的に作れそう。
またiMovieだと簡略すぎたタイムライン周りの表示も一般的な動画編集ツールぽくなってて、いまどこを編集しているのか分かりやすいです。iMovieだとタイムコードも超簡略表示だし(フレーム数も分からない)、映像トラック・音声トラックの表示もありません。
↓こちらはiMovieの画面。超シンプル。
↓こちらはMovaviの画面。一般の動画編集ツールと同様の情報が確認できます。外国製ツールですが日本語UI対応済み。
というわけでMovaviで作ってみたのがこちら。淡々さというのは何ら変わりませんが、強調表示も出来るし(周りはちゃんとグレーになるし、その透過率も設定出来るし)、情報のマスクも出来るし(上のサンプルでは左端をぼかしています)、テキストの背景も簡単につけられます。iMovieで諦めてたことがツール上ですべて解決☆ それでいて制作時間もiMovieとほとんど同じ!←これとても重要☆
これを仮にVegasやPremiereでやると、おそらく倍?もっと?(その代わり思い通りの編集が出来ますけど)。
なおこちらも無音です。Eラーニング系だと音声は必須でしょうが、製品デモだと音声でなく字幕で見せるやりかたも多いです。
お値段もそれほど高くなく(Movavi Video Editor Plus $59.95)、個人でも買える範囲、または会社請求もしやすいお値段ではないでしょうか。さらにWorthWagonというアフィリエイトサイト経由で買うと$34.95で買えます(今サイトを確認したらVideo Editor Plusの上位パッケージであるMovavi Video Suiteが$34.99で買えますね。5円くらいしか違わないので買うんだったらSuiteがいいと思います。SuiteはVideo Editor Plus + 変換ツールやスクリーンキャプチャツールなどいろいろ付いたパッケージ)。
というわけで、私はもっぱらMovaviを使って企業デモ動画を作ってます。Movaviでホビー動画を作ろうと思うと足りない機能もありますが、お仕事のデモ動画という目的だったら比較的サクサク作れると思いますよ☆
お金かけずにiMovie、少しお金かけてMovaviなどの有料ツール、という感じでしょうか。1コ2コだったらiMovieでもいけますが、長い目で見るならMovaviとか他のツールを使って、強調表示したり、マスクしたりして、企業という観点で「ちゃんとしてる感」のある動画を作れると思います。もしかしたら他にももっと便利なツールがあるかもしれませんので、あくまで私見として捉えていただければ。
ちなみにiMovieのほうが優れている点もいろいろあります。
- フリーズフレームが入れやすい。画面キャプチャ動画の操作速度と、字幕を表示したい秒数が合わないことがよくあるのですが(画面操作が早すぎとか、遅すぎとか)、早すぎのときは動画からフリーズフレーム(静止画)を切り出して尺をかせぎます。遅すぎのときは2倍速、3倍速再生をして尺を縮めます。これがiMovieはとてもやりやすいです。
- 字幕の出方が普通に綺麗・おしゃれ。さすがMac, iMovie。
- 動作が軽い!(macOS作ってる会社が提供しているアプリだから、そりゃ軽いよね)
逆にMovaviにも不満はあります。まあでも日本円4,000円くらいのツールだからまあこんなところでしょうね。
- マスクの形を角丸にしたいんだけど、出来ない
- マスクは1カ所しか設定出来ない(離れた2つの箇所をマスクしたい場合に対応できない)
- 動作が全体的に重い
- タイムラインの操作はやっぱVegasやPremiereのほうが上
ところでこのMovavi、UIやコンセプトがやたらとFilmoraにそっくり。どっちが先にリリースされたのか分かりませんが、お互いベンチマークとして見ているのかなー。
「僕、Windows環境なんですけど」という方は・・・
iMovieはmacのみ、Windowsにはありません。お使いの環境がWindowsだという方の場合、以前はWindows付属のムービーメーカーというiMovieぽいのがあったのですが、無くなってしまいました。フォトという標準で入っているツールで写真や動画をつなぎ合わせることは出来ますが、それ以上の機能はないので、Windowsだと有料ツールを検討した方がいいと思います(MovaviもWindows版あります)。
どうしても無料じゃないと、、、という場合には、これもいろんなサイトで紹介されてますが、Blackmagic DesignのDaVinci Resolveというのがあります。試用中であるロゴも入らず、普通の編集だったら問題なく使えます。が、動画制作ビギナーにはとてつもなく難しいツールなのでオススメしません。たぶんあれを最初に使っちゃうと「動画編集きちー」みたいな感想しか残らないでしょう。動作も重いし。
あとAviUtlも無料ツールとして超老舗なツールですが、動画エンコードには向いてますが、編集の自由度が高すぎるので、万人が使えるツールというものではありません。